A small biotech success story
Case study
本Caseの概要
ある米国を拠点とする小規模なバイオテクノロジー企業は、主にがん関連遺伝子変異を標的とした治療薬を開発しており、自社の主力となる標的がん治療薬をいち早く市場に投入しようと開発を競っていました。
ICONは、小規模バイオテクノロジー企業とのパートナーシップに豊富な経験を持っており、大手製薬企業とは異なるアプローチが必要であることを理解していたため、本試験を支援することになりました。
結果としてこのスポンサー企業とICONは、密接な関係を築き、柔軟で創造的かつカスタマイズされたソリューションを提供した結果、顧客が必要としていた緻密なプロジェクト管理、戦略的なアドバイス、および詳細な報告を提供することができました。
Situation
ICONと、米国を拠点とする小規模なバイオテクノロジー企業とのパートナーシップは、ある第Ⅱ相試験から始まりました。この試験におけるICONの革新的なアプローチ、卓越した運営能力、高品質な成果が評価され、このスポンサー企業は、困難な領域であるがん精密医療の分野でさらなる試験をICONに任せるようになりました。
協力関係は次第に拡大し、スポンサー企業が目指す野心的ながん治療薬の開発プログラム全体を、ICONが独占的に支援するパートナーシップへと発展しました。その後、このバイオテクノロジー企業が、腫瘍領域で最も頻繁に見られる遺伝子変異(特に治療ニーズが極めて高い腫瘍における変異)を標的とした主力のがん治療薬をめぐり、市場への投入競争が激化した際にも、再びICONをパートナーとして選びました。
現在、ICONはこのスポンサー企業のために14件の試験を実施中であり、さらに4件が準備段階にあります。この顧客のためにグローバルで約500名のICONスタッフが関与しており、その人数はさらに大幅に増加する見込みです。
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patient population
腫瘍DNAに特定の希少変異を発現している成人がん患者
ICON Service | Drug class | Indication | Regions | Study phase | Business segments |
Full Service | Chemical entity | Onclogy | Global | Phases 1-3 | Product Registration Services |
Challenges and solutions
希少な遺伝子変異を標的とした治療薬を市場に投入することは、小規模なバイオテクノロジー企業にとって大きな挑戦です。このスポンサー企業が主力化合物の第Ⅱ相および第Ⅲ相試験に進む際には、4件の大規模な試験を4カ月以内に次々と開始する必要がありました。
そのため、バイオテクノロジー分野の治験に豊富な経験があるCROパートナーを必要としていました。ICONは、競争の激しい臨床研究環境において、試験のオペレーションだけでなく施設や患者にとってもこの試験を魅力的なプログラムとするための戦略構築も任されました。腫瘍DNAに特定の(稀な)変異を有する成人がん患者のリクルートやその維持が難しい状況に加え、世界的なパンデミックの影響で試験の運営には物流や安全性に関するさらなる課題もありました。
ICONとスポンサー企業は共同でチームを編成し、調査を行い、ICONの「患者中心のアプローチ」に基づくイノベーション、協力体制、運営効率性を柱としたプログラムのビジョンとミッションを定めました。また、このプログラムのために以下の3つの目標を設定しました。
- 患者と施設が可能な限り便利に試験参加できるよう、利用可能なテクノロジーを最大限活用する。
- 臨床試験の管理を可能な限りシームレスにするため、テクノロジーを合理的に利用する。
- 臨床試験プロセスの各ステップにおいて、最もシンプルで効率的なアプローチをとる。
共通のビジョン、ミッション、目標を明確化したことで、ICONは試験に対してのアプローチを主体的に設計・実施することが可能になり、この革新的なバイオテクノロジー企業は競合他社と差別化されました。
また、クロスファンクショナルチームを編成し課題に向き合い、すべてのプロセスを徹底的に検証し、過去の試験チームの経験を活かしました。この試験でICONは、最新テクノロジーやベンダーのネットワークを活用して、パンデミックの中でがん臨床試験を実施するために施設が必要とするツールやサービスを提供しました。
デジタルヘルステクノロジーを導入することで、患者がより参加しやすい試験環境を整え、コンプライアンスや参加意欲を高めると同時に、施設がリアルタイムで患者データにアクセスできるようにしました。これにより試験全体の統合が促進され、施設での患者登録や運営手順が効率化されたため、最終目標である「シンプル化」が実現しました。
この他、スポンサー企業の試験に質の高い施設を確保できるよう、継続的な研究機会を提供するとともに、多様な試験を取り揃えることで、施設にとって魅力的な環境を整備しました。他にも施設や患者に向けてスタートアップの手続きを簡素化し、啓発活動を強化したことで、試験への参加者募集が促進され、開始までの期間も短縮されました。
これら一連の臨床試験の運営方法やプロセス最適化策にテクノロジー戦略を組み合わせることにより、パンデミック下の不確実な状況でも試験の成功を実現し、スポンサー企業からICONへの信頼やパートナーシップをさらに強化することに繋がりました。
Endpoints of interest
ICONとスポンサー企業は、一連のプロジェクトで「干し草の山から針を探す」ような、希少な患者を見つけ出すという課題に共に取り組むことで、パートナーシップを強化してきました。その成果として以下のような結果が得られています。
- スポンサー企業はICONが提供する戦略的アドバイスや、効率性と品質基準の高い試験運営能力を信頼しています。
- ICONのチームは、これまでの経験やリソースを最大限に活用するだけでなく、強固な関係性から効率的かつ革新的な解決策の提案に積極的に取り組んでいます。
- スポンサー企業がICONとの協力関係に安心感を持ったことで、担当する試験数やサービスの範囲が拡大しました。現在、提供するサービスはすべてフルサービスとなり、ポートフォリオ全体を対象とした取り組みや、スタートアップから統計解析まであらゆる支援を含んでいます。
双方にとって有益な企業文化を構築したことで、スポンサー企業はプロジェクトチームやプロセスにおける予測可能性、効率性、コスト削減の利点を実感しました。一方でICONは将来の開発パイプラインの展望を把握し、構築された関係性に最適な人材の育成や成長を促進することが可能となりました。